こんにちは、キジくんケンケンブログのキジけんです、ケンケン。
「知っていることをひけらかす」などというときの「ひけらかす」の漢字表記です。
「ひけらかす」は漢字で、
衒かす
炫かす
と書きます。
「衒かす」「炫かす」いずれで書いてもよいのですが、どちらかと言えば、「衒かす」と書くことを推奨したいと思います。
国語辞典での表記と漢字表記の根拠
僕が手元の国語辞典で調べたところ、少なくとも、見出し語で「ひけらかす」の漢字表記があるものはありませんでした。
ただそれだと上記の漢字表記の根拠が乏しいので、以下に、どこに載っていたのかを書きます。1
「衒」を使った「ひけらかす」は、「漢検漢字辞典 第二版」(日本漢字能力検定協会。2014年11月1日)によります。
「炫」を使った「ひけらかす」は、「新潮日本語漢字辞典(新潮社。2007年9月25日)」によります。
「衒かす」「炫かす」の送り仮名
送り仮名をどこから送るかは或る程度自由があると思いますので、
衒す 衒らかす 衒けらかす 炫す 炫らかす 炫けらかす
などもいいです。
ただ、送り仮名は多くても少なくても読みにくいので、敢えて言うなら、「かす」という送り仮名がいいのではないかと思います。
また、「ひけらかす」の「かす」は接尾語です(後述)。その意味でも、「かす」を送るのがいいと思います。
「ひけらかす」という言葉の成り立ち
語源
『新明解 語源辞典』(三省堂。2011年9月10日)では、「ひけらかす」は語源未詳としながらも、語源として「光らす」「誇らかす」の2説を紹介しています。
「ひけらかす」の「かす」
「ひけらかす」の「かす」は接尾語2です。
[か・す] 〘接尾〙(五段型活用) 他動的な意味を強調するのに用いる。 ⇒[表]
(現代国語例解辞典第五版(小学館。2016年11月20日))
上記の “[表]” に載っている動詞は以下の通りです。
「かす」の付く動詞例
うっちゃらかす
おちゃらかす
おどかす
おびやかす
おひゃらかす
かどかわす
そびやかす
たぶらかす
だまくらかす
ちゃかす
散らかす
とんがらかす
寝かす
はぐらかす
はねかす
ひけらかす
冷やかす
ほったらかす
まぎらかす
やらかす(現代国語例解辞典第五版(小学館。2016年11月20日))
「炫」「衒」という漢字
漢字の音読みと語義
「炫」という漢字の音読みと語義
炫
ケン(漢)
ゲン(呉)【語義】[一]⦅動⦆①強い光が照らし輝く。かがや-く。[通]眩。 ②輝きが目をまぶしくする。くら-ます。くら-む。[通]眩。 ③自慢する。誇る。てら-う・テラ-フ。[通]衒。
(全訳漢辞海第四版机上版(三省堂。2017年8月10日))(用例・反切等は省略)
「衒」という漢字の音読みと語義
衒
ケン(漢)
ゲン(グヱン)(呉)【語義】[一]⦅動⦆①う-る。 ㋐街を歩いて売り声をかけながら売る。㋑売り出す。㋒採用されることを求めて、自分を売りこむ。 ②見せびらかす。誇る。てら-う・テラ-フ。③惑わす。たぶらかす。
[ニ]⦅形⦆①自分をひけらかす。(全訳漢辞海第四版机上版(三省堂。2017年8月10日))(用例・反切等は省略)
「衒」という漢字に「行」(ぎょうがまえ・ゆきがまえ)が入っているのは、「街を歩いて売る」という意味だからです。
話がやや逸れますが、「行」(ぎょうがまえ・ゆきがまえ)は、「交通」「行動」というような意味があり、例えば、「衝」という漢字も「交通の要衝」という使い方がありますよね。
ちなみに、「女衒(ぜげん)」という言葉に「衒」が入っているのは、「衒」が「売る」という意味だからなのですね。
「てらう」という言葉
「ひけらかす」の類語として「てらう」があり、これを「衒う」と書くのは、ごく身近な普通の辞書にも載っています。
「ひけらかす」・「てらう」という意味の「衒」を使った熟語
げんがく【衒学】 学問・知識のあることを自慢し見せびらかすこと。「―的」
げんき【衒気】 他人に自分の才能などを見せびらかしたがる気持。
(岩波国語辞典第八版(岩波書店。2019年11月22日))
尚、下記で述べる通り、げんよう[衒耀] という言葉もあるにはあるのですが、現代日本語ではあまり使われないことばであり、岩波国語辞典第八版(岩波書店。2019年11月22日)には載っておりません。
「ひけらかす」・「てらう」という意味の「炫」を使った熟語
この意味での「炫」を使った熟語はわかりませんでした。
少なくとも、現代の日本語で通常使う言葉では、「ひけらかす」・「てらう」という意味の「炫」の熟語は無いのではないかと思います。
その意味で、僕は、「ひけらかす」の漢字は、「炫かす」よりも「衒かす」のほうが良いかなと思います。
参考:「げんよう」と読む言葉「炫耀」「眩耀」「衒耀」
この三つの言葉は似ていますが、意味はやや違います。
げん‐よう【炫耀】〔‐エウ〕
[名](スル)光りかがやくこと。また、かがやかせること。
「富貴を粧(よそお)い、他人の目を―するを務めとせり」〈中村訳・西国立志編〉げん‐よう【眩耀】〔‐エウ〕
[名](スル)まばゆいばかりに光りかがやくこと。まぶしくて目がくらむこと。また、目をくらますこと。「人の目を眩耀する」げん‐よう【衒耀】〔‐エウ〕
[名](スル)名誉・名声を得ようとして、盛んに自らを誇示すること。
「大世界に誇号し、―し、横行闊歩せんは」〈雪嶺・真善美日本人〉(大辞泉第二版(小学館。2012年11月7日))
「炫耀」と「眩耀」は似ている意味ですが、少し異なります。「衒耀」はかなり異なっていると言えます。
「炫耀」「眩耀」「衒耀」の三つの言葉を比較しても、「ひけらかす」という意味として使われているのは「衒」だと言えます。
まとめ
「ひけらかす」は漢字で、
衒かす
炫かす
と書きます。
どちらかと言えば、「衒かす」と書くことを推奨したいと思います。
以上です、ケンケン。
註釈- 辞書の年月日は、その版の発行年月日です。複数の刷があるものも、第一刷の年月日に則るものとします。また、引用の際、見やすくするために改行を入れたり、漢数字を算用数字に変えたり、細かい記号や歴史的仮名遣いを省略・置き換えしたり、文字装飾等したりすることもあります。[↩]
- 接尾辞という言い方もあるようですが、ここでは拘らないことにします。ちなみに、現代国語例解辞典第五版(小学館。2016年11月20日)の巻頭の「記述の要領(凡例)」の「三 品詞」では、「接尾語」という表現になっています。[↩]