ことば

副詞の「よく」(たびたびの意味)は漢字では

よくできました

こんにちは、キジくんケンケンブログのキジけんです、ケンケン。

「たびたび」という意味で「よく」という言葉があります。
これは漢字でどのように書くのでしょうか。

漢字表記

「たびたび」「どうかすると、すぐに」という意味の「よく」は、
能く
好く
と書きます。
(本稿としては「能く」と書くことを推奨します。)

但し、一般に、仮名書きしたほうがよいと言われていますので、特別漢字で書きたい動機がある場合のみ使ってください。

解説

副詞「よく」の色々な意味

副詞「よく」の色々な意味を、国語辞典から引用して紹介します1

よく<副詞>
〖良く・好く〗じゅうぶんに。「教わる」
〖良く・好く〗じょうずに。うまく。「書けた」
〖良く・好く〗感心・感謝などの、好ましいと思う気持ちをあらわす。「言ってくれた」
どうかすると、すぐに。「転ぶ」
たびたび。「見られる現象」
〖能く〗非難する(・意外だという)気持ちをあらわす。「そんなことが言えたものだ・言うよ」 [類]よくも
〖克く〗[困難に うちかって]りっぱに。「初志を つらぬいた」

(三省堂現代新国語辞典第六版(三省堂。2019年1月10日))

このように、国語辞典では④や⑤の意味に漢字が書かれていません。
ということですので、基本的には「かな書き」しましょう。

・・・でも、どうしても漢字で書きたいからこのページを読んでいるんですよね。

意味から考えると「好く」と書いたほうがよいかもしれない

日本語の「よく」のうち、「しばしば、ともすると」に相当するチャイナ語(現代漢語)は、次の通りです。

chang2(常)
chang2chang2(常常)
jing1chang2(経常)
shi2bu4shi2(時不時)
hao4(好)
ai4(愛)
rong2yi4(容易)

(岩波日中辞典第二版「よく」。(数字は四声を表す。簡体字は日本の字体に変換した。以下同じ。))

hao4(好) を使った用例は次の通りです。

今年はよく雨が降る jin1nian2 hao4 xia4yu3 (今年好下雨).

(岩波日中辞典第二版「よく」)

「好く」と書くのもまあ妥当かなという感じもしてきます。

漢文の「能く」

「能」は漢文訓読では「よく」と読み、次のような様々な意味を表します。

句法1
①可能を表す。
②必然性を表す。
③意志を表す。

句法2
副詞として動詞の前に置き、従来「よク」と訓読されてきたが、その表す意味は種々にわたるので、適切に読み分けて意味を正確に捉える必要がある。
①限定の意。
②程度の意。
③強調や肯定の意。
④反語の意。
⑤推量の意。

(全訳漢辞海第四版「能」に記載の句法の記述を簡略化したもの)

「能く」というと、「可能」という意味が第一に頭に浮かびますが、詳細に見ると、いろいろな意味があるということになります。

必ずしも「可能」という意味に囚われなくてもよいと思います。

「可能だからこそ、しばしばあるんだ」という解釈も可能だと思います。
可能だと思います
大事なので2回言いました。

能く

「しばしば。たびたび。」の「よく」を「能く」と書くという話は、僕だけが勝手に言っていることではありません。


意味
㊀ノウ。①よく。㋒しばしば。たびたび。「あれも昔し自炊の仲間でしたがあんまり人を馬鹿にするものですからく喧嘩をしましたよ〔吾輩は猫である〕」

(新潮日本語漢字辞典(2007年発行) 「能」の意味より引用)

本稿の立場

あくまで、日本語としてどう漢字表記するのが妥当かという観点が優先されるべきだというのが本稿の立場です。

「好く」は「すく」と誤読する可能性があります。
誤読の可能性の少ない「能く」と書くことを推奨したいと思います。

日本語において、「好」は「このむ」と読んだり、「好男子」の「好」であり、「しばしば。たびたび。」という意味を想起しにくいです。

まあ、究極的にはあなたの好くほうで書けばいいです。
あなたの好くほうです。
大事なので2回言いました。

結論

漢字表記

「たびたび」「どうかすると、すぐに」という意味の「よく」は、
能く
好く
と書きます。
(本稿としては「能く」と書くことを推奨します。)

以上です、ケンケン。

註釈
  1. 辞書の年月日は、その版の発行年月日です。複数の刷があるものも、第一刷の年月日に則るものとします。また、引用の際、見やすくするために改行を入れたり、漢数字を算用数字に変えたり、細かい記号や歴史的仮名遣いを省略・置き換えしたり、文字装飾等したりすることもあります。[]

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