こんにちは、キジくんケンケンブログのキジけんです、ケンケン。
動物のイカには、10本のアシ1があると言われているようですが、学術的にはウデ(腕)と言うようです。
では、国語辞典では、イカの説明をするとき、アシと呼んでいるのでしょうか、ウデ(腕)と呼んでいるのでしょうか。
次の三つの国語辞典では、アシ(足)と呼んでおります。
『三省堂国語辞典第七版』
『学研現代新国語辞典改訂第六版』2『学研新国語辞典改訂第六版』
『新明解国語辞典第七版』
例えばこのような感じです。
いか(名)〔動〕ヤリイカ・スルメイカなど、海にすむ、十本足のやわらかい動物。敵にあうと、すみをふき出してにげる。食用。
(三省堂国語辞典第七版。漢字表記、用例は省略。)
しかし、ウデ(腕)と呼んでいる辞書もあります。
いか[名]吸盤のついた五対の腕をもつ、海産の軟体動物。スルメイカ(マイカ)・ヤリイカ・コウイカ(スミイカ)・アオリイカなど、食用となる種類が多い。外敵にあうと黒い墨をはいて逃げる。《以下、略》
(明鏡国語辞典第三版。漢字表記は省略。)
確かに動物学的にはウデ(腕)と呼ぶのが正しいという意見もありますが、その考えを国語辞典に持ち込むのはいかがかと思います。いかがかと。
アシというのは本来、陸上に棲む動物の体の部位を表す言葉です。
陸上に棲む脊椎動物は、多くはアシを有します。
蛇のようにアシもウデもない動物もありますし、馬のようにアシはあるが腕はない動物もあります。
また、鳥のように、アシと翼のある動物もいます。
しかし、ウデがあってアシのない陸上脊椎動物は思い付きません。
昆虫などの無脊椎動物を考えても、「ウデがあってアシのない陸上動物」というのは、おそらくないですし、あったとしても、かなり例外的です。
「ウデがあってアシのない動物」というものはかなり奇妙です。
象の鼻と呼ばれているものは、物をつかむこともできます。しかし、だからといってウデ(腕)とは呼びません。
イカは水棲 動物ですから陸上の動物とは異なるのはわかります。
それでも世間でアシと呼んでいるものをウデ(腕)と呼ぶ明鏡国語辞典の態度は、どうなのでしょうか。
これはつまり、明鏡国語辞典は「本当はアシじゃなくてウデと呼ぶんだぜ。僕知っているんだ。ほかの辞書たちは知らないみたいだけどね」という、周りを見下した態度をとっていることになります3。
たいへん遺憾です。いかんです。
以上です、ケンケン。
註釈
- 脚と書くか足と書くかは微妙であり、漢字表記を決めるのが本稿の目的ではないので、取り敢えずアシと書きます。[↩]
- 書名の「現代」が抜けておりました。訂正いたします。[↩]
- 明鏡国語辞典の態度については別稿でも考察しております。[↩]