桃太郎「拙者は、鬼ヶ島に行って、鬼に宝物を差し出させますっ! ・・・これでいいですか?」
おじいさん「よく言った! さすが桃太郎! 日本一!」
おばあさん「まあ、うれしいわ。こんな時が来るかもしれないと思って、あの時の桃をずっと冷蔵庫に保管しておいたのよ。冷蔵庫から取り出して、切るとしますか」
桃太郎「『あの時の桃』・・・ですか?」
おばあさん「そうよ。あなたが入っていた桃をずっととっておいたのよ。道中、おなかが空いたら、食べなさい」
おじいさん「おばあさんが桃を切ったら、缶詰めにするから」
おばあさんが桃を切ると、おじいさんは金属缶に入れて、シロップを入れ、蓋を熔接しました。
立派な桃じるしの桃の缶詰の出来上がりです。
桃は大きかったので、たくさんの缶詰ができました。
桃太郎は、桃の缶詰を持って出かけようとしました。
おばあさん「あ、お待ち。例のアイテムも持っていきなさい」
桃太郎「例のアイテムですか?」
おばあさんは、串刺しになった3個の黍団子をくれました。
おばあさん「黍団子を食べたら、その串は、剣にもなるのよ」
桃太郎は、黍団子の剣を腰に差しました。
桃太郎「では、行ってきます」
・・・
桃太郎は、道中 考えました。
桃太郎(独り言)「いや、待てよ。いくら桃を冷蔵庫に入れていたと言っても、拙者が生まれてから何年たったのだろう。さすがに桃の消費期限は過ぎているだろう。腐っているかもしれない・・・まあ、いいや、桃の缶詰は、そこらへんの動物に食わせて、大丈夫だったら食べるとしよう」
・・・
桃太郎がしばらく歩いていくと、犬がやってきました。
桃太郎「ああ、そこの犬。いいところで出会った」
犬「なんですか」
桃太郎「この桃の缶詰をあげるから、鬼ヶ島まで、鬼の征伐についてきてくれないかな」
犬「えっ、くださるんですか? 桃の缶詰は大好物なんです。いいですよ、ありがとうございます」
犬「・・・あれっ、この缶はプルトップじゃないですね」
犬は缶詰を開けることができません。
桃太郎「そっか、おじいさんは昔の人だからプルトップなんて知らないんだ」
缶詰の蓋はがっちりと熔接されています。
犬「缶切りがないと開けられません」
桃太郎「弱ったな、缶切りは持ってないんだ」
犬「では、大変申し訳ありませんが、鬼の征伐についていくことはできません」
桃太郎「チッ、チッ、チッ、ノンノンノン。犬よ、拙者は『この桃の缶詰をあげるから、鬼ヶ島まで、鬼の征伐についてきてくれないかな』と言ったんだ。それに対してキミは『いいですよ、ありがとうございます』と言ったんだ。これで鬼征伐についていく契約は成立しているんだ。缶切り付きとは言っていないし、ましてや食べるところまで保証はしていない。」
犬「・・・ま、そう言われればそうですね。仕方ないですね。ついていきます。でも、お腰のところに黍団子があるじゃないですか、それ、くださいな。くださらないと、おなかが空いて戦えません」
桃太郎「うーん、そう言われれば仕方あるまい」