こんにちは、キジくんケンケンブログのキジけんです、ケンケン。

最近新しく出た三省堂国語辞典(三国)第八版について、前回に引き続き、第七版と比較しつつ、新型コロナに関する言葉を見ていきます1。
ソーシャルディスタンス
ソーシャルディスタンスという見出し語があるかないかについて
第七版:なし
第八版:あり
第八版は「ソーシャル」の子見出しとして「ソーシャルディスタンス」があります。
●ソーシャル ディスタンス 〔social distance〕
①〔社会学で〕相手との親しさなどで決まる、会話時などの距離。
②感染症を防ぐため、相手と取る距離。フィジカル ディスタンス。〔2020年の新型コロナウイルスの感染拡大に ともなって広まったことば。この距離を取ることは「ソーシャル ディスタンシング(social distancing)」〕
▷社会(的)距離。(三省堂国語辞典第八版(三省堂、2022年1月10日))
そう言えば、「フィジカル ディスタンス」という言葉もあったのを思い出しました。
考えてみると、ソーシャルディスタンス とは「社会的距離」という意味ですが、この言葉が上記②で言うような「感染症を防ぐために取る距離」という意味で使われるのはやや違和感を覚えます。社会学で使われていた①の意味の言葉を転用したのですね。
第七版は、①の語釈の「ソーシャル ディスタンス」も存在しません。
ということは、第八版で①の語釈も書いてあるのは、②の意味の由来を示すためだろうと思われます。
ロックダウン
ロックダウンという見出し語があるかないか
第七版:なし
第八版:あり
第八版は「ロック」の子見出しとして「ロックダウン」があります。
●ロック ダウン ⦅名・他サ⦆〔lockdown〕〔ある地域で〕外出制限や休業・休校などを強制すること。都市封鎖。
(三省堂国語辞典第八版(三省堂、2022年1月10日))
「ロック ダウン」の語釈として、「感染症を防ぐため」という目的は書かれていませんが、そもそも「ロック ダウン」とは「感染症を防ぐため」とは限らないのです。
じゃあ「感染症を防ぐ」以外でどんなときにロックダウンをするのかはわかりませんが・・・。
まあ、都市で暴動が起こったときに、「外出するな」というロックダウンをすることはありうると思います(日本でそういうことをするかはわかりませんが)。
暴動などでもロックダウンをすることはありえますが、やはり現在「ロックダウン」と言えば感染症を防ぐためのものであるという印象であり、第八版は新型コロナの感染を念頭において、新たに取り入れたものと思われます。
「不要不急の外出」という用例
「不要不急の外出」という用例があるかないか
第七版:なし
第八版:あり
「不要不急」という見出し語は、第八版にも存在しません。
しかし、第八版では「不要」の項目の中に「不要不急の外出」という用例があります2。
「不要不急の〔=さしあたって必要がない〕外出」
(三省堂国語辞典第八版(三省堂、2022年1月10日))
「不要不急」という言葉はありますが、何が不要不急なのかはわからないですね。
「さしあたって必要がない」と言い換えても、何が「さしあたって必要がない」かどうかは誰も知りません。
以上です、ケンケン。
註釈- 辞書の年月日は、その版の発行年月日(年は西暦)です。複数の刷があるものも、第一刷の年月日に則るものとします。また、引用の際、見やすくするために改行を入れたり、漢数字を算用数字に変えたり、細かい記号や歴史的仮名遣いを省略・置き換えしたり、文字装飾等したりすることもあります。[↩]
- 第七版は「不要不急部門」という用例ならあります。[↩]