こんにちは、キジくんケンケンブログのキジけんです、ケンケン。
本稿では、次のことを述べます。
「必」の筆順について、旧文部省による『筆順指導の手びき』にて示されている筆順は、不合理である。
旧文部省『筆順指導の手びき』による「必」の筆順
旧文部省『筆順指導の手びき』によると、「必」は、初めに、カタカナのソを書いて、\ 左の点 右の点 の順に書きます1。
言葉だと分かりにくいので、画像でも書いておきます2。

筆順の合理性の検討
筆順の合理性はどのように判断できるのか
筆順の合理性の判断は難しい問題です。一般的には「書きやすい」筆順がいい書き順であるということです。
しかし、「書きやすい」では感覚的な問題となってしまいます。また、既に「必」という漢字を書いたことのある人は、その書き順が書きやすいと感じてしまうかもしれません。
筆画の間隔を考える
一画の終点と次の画の起点3が近いほうが書きやすいと仮定し、合計値を出せばいいのではないかと思いました4。
当然ながら、書き順によって異なることになります。
必の筆画の間隔の合計値
次の画像では、①②③の三つの書き順を示します。③が『筆順指導の手びき』による書き順です。
①は、(最後の2画として)ノ を書いてから、右の点を書く書き順です。
②は、心を書いてから、ノ を書く書き順です。
a、b、c、d が筆画の間隔です。(各赤線の(始めではなくて)終わりのほうに a、b、c、dと書いてあるのが見にくいですが、ご容赦ください。)
筆画の「はね」のない形で考えています。
この筆画の間隔を測るのは、紙に印刷して物差しで測る というアナログ的なやり方をしています。

なんとなく画像が薄い感じがするので、改めて書いておきます。
①の書き順の筆画の間隔の合計値(赤字で書いてある)は62.6mm、②は57.8mm、③は78.8mmです。
筆画の書き方をちょっと変えると、多少の値の変動はあるでしょう。しかし、①と②はまだしも、③は明らかに値が大きすぎます。
それから、速く書くとどうなるのかを上の画像の一番下に書いてありますが、③は、まるでスターマーク5
⚹
(↑環境によってはうまく表示できないようです。)のように見えます。③のcとdの長さが大きすぎます。
これらのことから考えて、③の書き順は不合理です。
細かいことですが、①と②(の合計値どうし)を比較すると、多少 ②のほうが小さいです。ただ、横書きで考えた場合、最終画から次の字に続けやすいのは①です6。
字の形と筆順
印刷の字の形と、手書きの字の形が一致している必要はありません7。しかし、逆に不一致である必要もありません。
上記では挙げていませんでしたが、「必」には、初めに × を書いて、上の点 左の点 右の点 と書いていく筆順もあります(筆順④とします)。
筆順③(『筆順指導の手びき』によるもの)と筆順④に共通する考えは、
・必は心という字とは異なる。
・×を大きく書いてバランスをとったほうがよい。
ということだと思います。
しかし、大きなノが含まれる必が心と異なるのは一目でわかります。また、字をゆっくり書けるならばバランスを取ってうまく書こうという考えもわかりますが、硬筆で速く書く場合はバランスを優先する必要はないでしょう。
筆順指導の手引きの扱い
『筆順指導の手びき』には次のように記されている。
ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また否定しようとするものでもない。
確かにそのとおりであるが、わざわざ書きにくい筆順を挙げるべきではありません。
以上です、ケンケン。
註釈
- あくまでも書く順番の問題なので、カタカナのソや\という形の通り書くという意味ではありません。[↩]
- これも、書き順の問題なので、望ましい形ということではありません。[↩]
- 収筆・起筆という用語も存在しますが、書道のイメージを喚起するので、ここでは使いません。[↩]
- 本当に筆画の間隔の合計値が小さいほうが書きやすいのかは厳密にはわかりませんが、厳密さは本稿では求めていないので、取り敢えずやってみます。[↩]
- ×と━を重ねたようなマーク[↩]
- 密のように字の一部に必が登場する場合を考慮する必要もあるかもしれません。[↩]
- しばしば挙げられるのは令という字をどう書くかの問題です。[↩]